日本経済について

日本の自動車産業の未来は暗い?

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日本経済をけん引しているのは自動車産業です。しかし、電気自動車が主流になれば、日本の自動車産業の競争力は落ちるかもしれません。

日本の自動車産業は優秀

3年前のものなのですが、経済産業省製造産業局自動車課の資料には、

・自動車製造業の出荷額は主要製造業の約2割(52兆円)

・自動車関連の就業人口は全体の約1割(約550万人)

・自動車の輸出額は全体の約2割(約15兆円)

ということで、自動車産業は日本の重要な産業の一つといえます。

私は仕事がら海外に行くことが多いのですが、どの国にいっても日本車がたくさん走っています。日本車は燃費もいいし、壊れにくいし、その割に安いし、で外国でも大人気です。学生のころ、南米の人が「他の国は車だけを輸出する。でも日本は車だけでなく、部品工場など車に必要なものセットで輸出する。だから修理もできるし安心して日本車を購入できる」と言ってたのをまだ覚えています。日本が誇らしく思えた瞬間でした。

日本車の優位性について様々なことが言われていますが、ひとつが日本企業が「すり合わせ技術」を得意としているから、と言われています。

すり合わせ型の開発:最終メーカーが儲かる

これは私の解釈なのですが、「すり合わせ技術」というのは「様々な部品と部品を互いに調整しつつ、有機的に組み合わせる」というものです。部品Aを調整したら、その影響が部品Bにまで及ぶので、部品Aの担当者と部品Bの担当者が密に連携を取る・・・こういった作業が、日本企業の得意分野です。

自動車などはまさに日本企業が得意な「すり合わせの技術」により世界の競合よりも優れた商品をつくることができたと言われています。エンジン、サスペンション、シャシー、ボディなど様々な部品を、有機的に微調整しつつ、完成品である自動車の質を高めてきたのがこれまでの日本の自動車会社の競争優位でした。部品間の複雑な調整ができる最終組立メーカーが超過利潤を得ることができます。

組み合わせ型の開発:最終組立メーカーは儲からない

ところが・・・電気自動車は極論すると「でっかいラジコンカー」と同じで、部品間で密な連携を取らずとも、パーツを組み立てたらどの会社でも同じような車を作れるとのことです。現にダイソンなど従来の自動車会社ではない会社が、電気自動車に参入しています。ブロックを組み立てるように車を作れるようになるということです。

そうなると、日本の自動車会社が得意としてきた「部品間の微妙な調整」などせずとも、ただ単に部品を組み合わせるだけで同じような性能の車が出来てしまうので、価格勝負になってしまいます。日本でなくとも、中国や、もっと人件費の安いところで作った「安い車」が売れる、ということになります。

すり合わせ・組み合わせの違いを図で示すと下記のようになります。すり合わせ開発は部品間の調整(矢印)が多いが、組み合わせは部品は「最終製品に接続できればOKで、他の部品との調整は必要ない」ということです。

すり合わせ型の開発でつくられた最終製品は、最終製品が競合他社より優れている場合が多いです。超過利潤は最終組立メーカーに集まることになります。日本車などはこれにあたります。

一方で、組み合わせ型の開発で作られた製品は、最終製品を作るメーカーは「単なる組立屋」となるため、価格勝負に陥ります。超過利潤は「より良い部品を作る企業」に集まることになります。

超過利潤が最終組み立てメーカーから「基幹部品」メーカーに移った例は、「パソコン」産業に見られます。従来は圧倒的に高性能な最終製品を作っていたIBMが超過利潤を得ていたのですが、やがて基幹部品であるOSを作るマイクロソフト、同じく期間部品のマイクロプロセッサーを作るインテルに稼ぐ力が移っていき、「単なる組立屋」となったIBMはパソコン事業をレノボに売却することになります。

電気自動車は、上述のように「部品をブロックのように組み合わせるだけ」で最終製品を作れると言われています。もし今後電気自動車がどんどん広がると、超過利潤は最終組立メーカーではなく、部品メーカーに移っていくかもしれません。自動車産業にもパソコンと同じような事態が起これば、今後日本の自動車メーカーの競争力は低下する可能性があります。自動車産業はすそ野が広いので、最終メーカーの衰退は多くの下請企業の業績悪化につながります。最終的には日本経済に悪影響を与える可能性があります。

電気自動車が広まると、どこに超過利潤が集まるのか?

電気自動車で最も重要なパーツと言われているのは「バッテリー」です。よって、より良いバッテリーを作る「バッテリーメーカー」に超過利潤が移る可能性があります。さらに下のレイヤー、つまり、バッテリーの部品である「電極材」「セパレーター」といった部材を作る優良メーカーが超過利潤を得る可能性もあります。

ちなみに私はリチウムイオンバッテリーの部材である「セパレーター」を作る「ダブルスコープ」という会社の株を買って成功しました。ただ、今後はセパレーター無しでもリチウム電池が作れる技術が開発されており、まだ誰が最終勝利者になるのかは誰にもわからない状況です。

また、今後は自動運転も普及していく可能性があります。そうなると自動運転を制御するソフトウェアを提供する企業に超過利潤が発生するかもしれません。グーグルといったIT企業が自動運転で天下を取れば、この分野で莫大な収益を上げるかもしれません。

まとめ

  • 電気自動車が普及すると、日本の自動車産業の将来は厳しいかもしれない。
  • 電気自動車は「部品を組み立てるだけ」で作れるため、最終組立メーカーに超過利潤が集まらない。超過利潤は部品メーカーに集まる可能性がある。
  • 日本企業が得意としていた「すり合わせ型の開発」が生かされない世界となるため、日本の自動車メーカーの利益が低下する。
  • ひいては日本の自動車関連産業も厳しくなる可能性がある。

日本経済の中で自動車産業が占める割合が高いので、もしこのようなシナリオ通りに進むと、日本経済自体がさらに悪化するかもしれません。一方で、日本には優れた部品メーカーがあるので、このような企業への投資により利益を得ることができるかもしれません。







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スモーク

スモーク

新卒日本企業→豪州駐在→豪州企業転職→日本に帰り日本企業転職→外資系企業転職で今に至る。オーストラリアには7年在住。豪州株がポートフォリオの主力で総資産は1億円弱、年間受取配当金は税後で300万円。すでに経済的自由は達成も、まだまだ資産と配当金を伸ばしていきたいと考えている。

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