送電線・パイプライン株分析

キンダーモルガン(KMI):北米のパイプライン運営会社

投稿日:2018年9月7日 更新日:

初めてのエネルギー株への投資として、北米パイプライン運営会社のキンダーモルガン株を購入しました。

パイプライン運営会社ということで、ビジネスとしては安定しています。しかし、2015年12月に75%もの減配を発表し、株価が大暴落したという前科があります。理由は、想定より売上が伸びなかったことと、あまりに多額の配当金を出し過ぎたので、財務規律を回復するために減配したということです。

分析してみましたが、3年前と違い、2018年現在のキンダーモルガンの配当払いはおそらく持続可能なレベルであり、減配はないと想定し、今回投資を決断しました。

地政学が趣味で好きだから(そして石油価格がそろそろ上がるかなと思い)エネルギー株に投資してみた、ということなので、エネルギービジネス自体は良く知りません。(私はメーカー勤務なので・・・身バレはヤバイので会社の詳細は言えませんが)

というわけで分析にすごく時間がかかりました。過去に日本の中小株でも似たように分析してたので、これを応用しました。それでも資料が英語なので読むのに時間かかりましたが…。ただ、エネルギー企業のビジネスに一度慣れたら、次に分析する時には今回のキンダーモルガンの銘柄分析で得た知識を応用できそうです。

キンダーモルガン分析まとめ

  1. パイプラインビジネスを運営しており、売上は安定している。しかし、主にアメリカの石油・ガスの生産量により、売上が多少上下する。
  2. 石油生産量減でパイプライン輸送料収入が想定通り伸びず、結果として2015年は限界以上に配当金を払うこととなった。キャッシュが回らなくなり2016年からは配当金を減らした。
  3. 2018年はアメリカの石油・ガス生産量は上向いている。売上の伸びが期待できるので、現在の配当金を支払うためのキャッシュは十分に確保できると考えられる。よって減配の心配はない。
  4. ただし、キンダーモルガンの発表通り2019年・2020年にそれぞれ配当金を25%UP出来るか・・・は未知数。
  5. 将来もアメリカの石油・ガス生産量は増える見込み。キンダーモルガンにとって追い風が続くと思われる。

キンダーモルガンのビジネス

パイプライン運営会社であるキンダーモルガンは、「パイプラインを使って石油・ガスを運びたい会社」から輸送料金を受け取ります。パイプラインというのは初期投資が莫大にかかりますが、一度建設してしまえば、あとは安定して輸送料金を得ることができます。

競合他社が近くでパイプラインを建設し、価格競争になることは基本的にありません。というのも、初期投資が莫大なため、同一地域に2社以上で価格競争をしてしまうと、莫大な固定費を回収できなくなるからです。よって、同一地域には輸送需要を満たすパイプラインは1つしか建設されません。これは「自然独占」という現象で、鉄道や送電線も同様に同一地域に1社しか存在しない場合が多くなります。その代り、独占の弊害を避けるため、政府により料金規制がなされる場合が多いです。

つまり、キンダーモルガンは、パイプライン建設のために莫大な資本が必要だが、輸送料金でキッチリ回収するというビジネスを行っています。

キンダーモルガンの2018年9月5日のプレゼンテーション資料に、会社のビジネスが詳しく説明されているので見てみます。

保有しているパイプライン網です。

赤い線がガスパイプラインで、黒い線が石油パイプラインです。キンダーモルガンのが保有するガスパイプラインの総延長は北米で一番長いようです。右上に円グラフがありますが、資産価値のうち56%がガスパイプラインが占めています。この会社は石油よりもガスパイプラインの方が比重が大きいことがわかります。パイプラインでCO2も運んでいるようですが、これは油田にCO2を注入して、さらに石油を取り出すために用いてます。

次に気になるのは、パイプライン利用料の決まり方です。

資料の中では、キンダーモルガンのキャッシュフローのうち96%が「コモディティ価格の影響を受けない」と記載があります。さらに詳しく見てみます。

・全体の66%が「石油・ガスの輸送量と関係なく、輸送料を受け取る」契約(Take-or-Pay)からのキャッシュインです。不動産の賃貸契約みたいなものですね。旅行に行こうが、家賃は払わないといけないように、パイプライン輸送契約したら、ガスや石油を流さなくても、キンダーモルガンに使用料を払う、ということです。契約は複数年で更新するようです。

・全体の24%は「実際の輸送料に従い、輸送料を受け取る」契約からのキャッシュインです。石油やガスの生産が増えれば、この契約からの収入は増えますが、生産が減ると収入が減ります。

・残りの10%はコモディティ価格に影響があるような契約や、ヘッジ契約からの収入になっています。(ヘッジ契約の構造は分かりません・・でも全体の6%しかないし無視します。)

 

キンダーモルガンのパイプライン収入は、石油価格やガス価格に影響がなく、かなり安定しているように見受けられます。

でもキャッシュフローの66%を占める「実際の輸送料に従い、輸送料を受け取る」契約(Take or Pay)は「輸送量」に関係なく固定収入を得られるのなら、なんで3年前の2015年に75%の大減配を発表、つまりキャッシュフローの読みを大外ししたのかな~と思い、資料を読んだりネットでいろいろ調べました。

パイプライン輸送料はすべてが規制されているわけではなく、一部のパイプラインでは交渉で値決めするようです。2018年9月5日のプレゼンテーション資料の24ページのパイプライン料金詳細に、"intrastate;essentially market-based""not price regulated"と記載してあるので、普通の商品と同じく需要に応じて価格が上下するものと思います。なので、契約更改のときに、「パイプライン輸送需要」が多れば、キンダーモルガンは強気の価格交渉に出て輸送料金を上げることができますが、逆に「パイプライン輸送需要」が少なければ、輸送料金が下がってしまいます。不動産の家賃交渉と同じですね。

以上のように、キンダーモルガンのパイプライン輸送料は、「コモディティ価格には影響されない」ものの、「石油・ガスの輸送量には影響する」ということがわかります。

輸送料金のうち、CO2のパイプライン輸送料などは石油価格やガス価格にダイレクトに反映されるようです。キンダーモルガン2017年アニュアルレポートの8ページには、石油価格が1ドル上がればキャッシュフローが700万ドル上乗せされ、ガス価格が0.1ドル上がればキャッシュフローが100万ドル上乗せされると記載があります。ただ、キンダーモルガンの営業キャッシュフローは40億ドル以上あるので、石油価格が10ドル上げ下げしても影響は7000万ドル、率にして1%か2%くらいしか営業キャッシュフローが変わりません。コモディティ価格の影響は大きくないと考えていいでしょう。

キンダーモルガンの将来の成長はアメリカの石油とガスの生産量が増えるかどうかに懸かっていると思います。

過去のアメリカにおける石油とガスの生産量の推移を見てみます。ガスは横ばいですが、石油は2015年をピークに2017年にかけて生産量が落ちています。後述しますが、2015年以降キンダーモルガンの営業キャッシュフローが減ってきています。これはアメリカの石油生産量の減少が影響で、パイプライン輸送料収入が減っていった、ということかと考えられます。

石油生産量推移(出所:アメリカ エネルギー省エネルギー情報局)

ガス生産量推移(出所:アメリカ エネルギー省エネルギー情報局)

 

 

キンダーモルガンの財務数値

数値の羅列ですが、アニュアルレポートからの各種数値を掲載します。

売上

まず売上ですが、2015年から下がっています。ただ、営業キャッシュフロー ÷ 売上高 の営業キャッシュフローマージンはどの年も30%前後あり、安定したキャッシュフローが得られています。一般的に営業キャッシュフローマージンは毎年継続的に15%以上あれば良好なビジネスといえます。パイプライン運営というのは盤石なビジネスモデルということが数値でも表れています。

キャッシュフロー

営業キャッシュフローは2015年をピークに右肩下がりの状況です。これは上記に示したように石油産出量の減少と関係があるものと考えられます。事実、エネルギー省のグラフによると2015年をピークに石油の生産量が減って言っています。しかし、2018年は石油も天然ガスも生産量が上昇しています。そのためだと思うのですが、キンダーモルガンの2018年上半期の営業キャッシュフローは約25億ドルで、2017年上半期より10%以上も増えています。(2018年2Q報告書の7ページに記載あり)2018年通年はこれまでの傾向と一転して営業キャッシュフローは増えるものと思います。

続いてキャッシュフローなのですが、2015年までバンバン投資でお金を出しています。追加のパイプライン投資のために投資を重ねたことが分かります。一方で、減配後の2016年からは、一転して投資キャッシュフローが減っています。負債の返済など、財務体質の改善を図ったことがわかります。

財務キャッシュフローの内数となるのですが、配当金として支払った金額を外だしして示しています。2015年は配当金で42億ドルも支払っていますが、どう見ても持続できる額ではありません。2016年以降は大幅に減って11億ドル程度になっています。11億ドル程度なら、フリーキャッシュフロー(FCF)の枠内におさまっているので、大丈夫でしょう。

配当金支払余力

じゃあどれくらいの配当金支払額なら、持続可能か・・・というのを検証してみました。

「営業CF - 設備投資」:営業CF営業キャッシュフローから、パイプラインを修理・維持をする「設備投資(Capital Expenditure)」を引いた余りは、配当金に支払っても問題ありません(設備投資でのキャッシュアウトは、キャッシュフロー計算書にCapital Expenditureという項目で記載があり、この数値を使いました。)

「営業CF - 減価償却費」:さらに甘く見ると、ビジネスを継続するためには減価償却相当分は最低でも設備投資をする、と想定し、営業キャッシュフローから減価償却費を引いた数値が「ムリしてひねり出せる最大の配当金総額」と言えると思います。この枠内で配当金を支払うなら、長期的には持続可能ではないものの、なんとかキャッシュは回ります。

前置きが長くなりましたがグラフにすると下記のようになりました。

2014年までは、配当金支払金額(赤い線)は、配当金として払えるギリギリ上限の「営業CF -減価償却費(緑の線)」の枠内に収まっていますが、2015年は配当金支払額が突き出ています。さすがにキャッシュが回らないので減配した、ということが分かります。

一方2016年以降は、配当金として払っても問題ない「営業CF-設備投資(青の線)」を下回る金額しか配当金を払っていません。この程度の配当金ならば十分に払えるものと考えられます。

2018年は上半期の営業キャッシュフローが伸びるており、通年でも伸びることが見込まれます。2018年の配当金支払額60%増の18億ドルとなりますが、営業CFが増えるのでおそらく「営業CF-設備投資(青い線)」の枠内に収まると思います。少なくとも、「営業CF-減価償却費(緑の線)」の枠内には確実に収まると思います。なので、少なくとも現時点の配当利率である4.5%はしばらく維持出来るものと私は考えています。

バランスシート

2015年までは順調に資産を積みあがっていますが、2016年・2017年は資産が減っています。負債、特に有利子負債を減らして財務体質の改善を図っていることがわかります。しかし、378億ドルにも上る有利子負債があるので、アメリカの金議上昇により、キンダーモルガンの金利負担が増えてしまいます。

各種指標

多額の減価償却費により純利益が少ないキンダーモルガンの財務指標はズタボロです。キンダーモルガンにとってはあまり意味のない指標かもしれません。個人的には「配当原資が確保されているか」を確認するのが重要だと思います。

負債比率は徐々に減らしており、財務体質は年を経るごとに強靭になっています。

キンダーモルガンの将来の見込み

まずは将来の配当金です。

2018年の一株あたり配当金は0.8ドルですが、これを2019年に1ドル、2020年に1.25ドルと、毎年25%上げると発表しています。今の株価(17.67ドル)だと、配当利率は税前で2019年5.66%、2020年に7.1%となります。

ただ、計画通りの配当金払いに十分な売上・キャッシュを将来確保できるのかは未知数です。2016年・17年のように、「想定ほど売上が伸びず、計画通り配当を払えない」という事態になるかもしれません。

上記に記載した通り、少なくとも今の一株当たり0.8ドルの配当金払いは維持できると思いますが、配当金増は「実現したらラッキー」くらいに構えたら良いのかなと思います。

 

さて、”キンダーモルガンの将来の成長はアメリカの石油とガスの生産量が増えるかどうかに懸かっている”と記載しましたが、将来予測を確認してみます。

まずキンダーモルガン自身の予測ですが、今後10年間、2027年にかけて天然ガスの需要は40%も伸びると発表しています。

特に顕著な伸びを示すのが、LNGとして輸出されるガスです。アメリカではシェール革命で天然ガスの生産が爆発的に伸びたため、ガスが余りました。余ったガスをLNGにして船で外国に持っていくようになりましたが、今後どんどんLNG輸出量が増えるようです。そのほかにメキシコへの輸出なども増えるようです。

更に、増加するガス輸送需要をみたすための新たなパイプラインも、次々と建設が完了するようです。総額63億ドルにものぼります。

キンダーモルガン自身の発表だけを信じることはできないので、アメリカ政府の将来予測を見てみます。アメリカエネルギー省エネルギー情報局の2018年版将来予測の、天然ガスを石油の生産予測でも、今後生産が伸びるようです。ほとんどがシェール革命により生産できるようになった、シェールガスやタイトオイルの生産増が見込まれています。

一時期石油価格やガス価格の下落で生産量が落ちていましたが、石油価格上昇や、生産コストの低減により、今後生産が伸びるようです。キンダーモルガンの「パイプライン輸送ビジネス」にって、今後も追い風が続くと見込まれます。

 

キンダーモルガン分析のまとめをもう一度記載します。下記の想定の基づき、購入してみました。

  1. パイプラインビジネスを運営しており、売上は安定している。しかし、主にアメリカの石油・ガスの生産量により、売上が多少上下する。
  2. 石油生産量減でパイプライン輸送料収入が想定通り伸びず、結果として2015年は限界以上に配当金を払うこととなった。キャッシュが回らなくなり2016年からは配当金を減らした。
  3. 2018年はアメリカの石油・ガス生産量は上向いている。売上の伸びが期待できるので、現在の配当金を支払うためのキャッシュは十分に確保できると考えられる。よって減配の心配はない。
  4. ただし、キンダーモルガンの発表通り2019年・2020年にそれぞれ配当金を25%UP出来るか・・・は未知数。
  5. 将来もアメリカの石油・ガス生産量は増える見込み。キンダーモルガンにとって追い風が続くと思われる。

さて、今後はどうなるでしょうね。個人的には配当金がドンドン増えていってほしいと思います。







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スモーク

スモーク

新卒日本企業→豪州駐在→豪州企業転職→日本に帰り日本企業転職→外資系企業転職で今に至る。オーストラリアには7年在住。豪州株がポートフォリオの主力で総資産は1億円弱、年間受取配当金は税後で300万円。すでに経済的自由は達成も、まだまだ資産と配当金を伸ばしていきたいと考えている。

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