地政学

トルコリラは大丈夫か?:アメリカとの対立は長続きしそう

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最近はトルコリラの相場で盛り上がっています。私はFXはしないのですが、トルコ経済が暴落したら新興国に通貨危機が拡散して、さらには世界経済にも影響が出てくると思うので注目はしています。

ところでトルコは非常に強権的といわれるエルドアン大統領が、娘婿を財務大臣にするわ、ソブリンウェルスファンドの会長に自ら就任するわ、中央銀行には金利を上げるなと要求するわ、でメチャクチャなことになっています。こんなヤバイ国に外国から投資が集まるわけがないと思うのですが・・・。

トルコといえば、黒海をはさんでロシア、南に内戦中のシリアがあり、地政学的にも興味深い国です。さらにNATO加盟国ということで、一応はアメリカの同盟国のはずが、トルコとアメリカの関係は非常に悪いです。アメリカ人牧師が、トルコでクーデター計画に加担したということで拘束されました。このことに怒ったアメリカがトルコに関税を掛けるという事態になり、リラ安が止まりません。

少なくとも世界の覇権国であり、金融システムの中枢を握るアメリカと仲良くしないことには、トルコ経済の今後は厳しいでしょう。個人的にはトルコがアメリカ人牧師を解放して、アメリカがトルコ関税を廃止したら、トルコの通貨安危機は収束すると思ったのですが、、英文記事などを中心に調べていると、どうやら今のトルコ・アメリカの対立は長期的に続くように思えてなりません。というわけで、トルコリラやトルコ株への投資はお勧めしません、というのが結論です。

トルコの対シリア政策

各国の外交政策や地政学的問題を調べるには英語のほうがより情報が集まります。というわけでグーグルでturkey america geopoliticsで検索したら2番目にヒットしたThe National Interestというアメリカの地政学に関するウェブページがありました。

トルコの南部にはシリアがあり、シリアは内戦中です。アサド政権、反政府勢力、イスラム国と三つ巴でしたが、イスラム国はほぼ壊滅されました。欧米はイスラム国を壊滅させたいものの、犠牲者が出る地上軍の派遣は後ろ向きでした。そこで役に立ったのがクルド人部隊で、彼らが地上からイスラム国を攻めたおかげで、イスラム国壊滅が早まったといえます。というわけでアメリカはクルド人に軍事支援を行っていました。今は軍事支援は終了したものの、まだアメリカは陰に陽にクルド人の支援はしているようです。

トルコはアサド大統領のことを「テロリスト」と呼んでいるので、一見して「アサド以外の人に政権をとってほしいのかな?」と思います。アメリカの支援を受けたクルド人がそのままシリア内戦で勝利したら、アサド大統領は逃げ出すしかないです。ただ、トルコとしては表向きの言葉と裏腹に、実はアサド政権にそのまま居座ってほしいと思っているようです。

逆にトルコはシリアのクルド人を越境攻撃しています。トルコは、何があっても絶対にクルド人のシリア内戦勝利は避けたいと考えています。

トルコはクルド人を抑えたい

トルコ西部には、クルド人が住んでいます。下記の地図の茶色のところがクルド人が居住しているエリアです。

地図の通り、クルド人はトルコ・イラン・イラク・シリアに住んでおり、どの国でも少数民族です。クルド人は自分の国を持つという悲願を持っていますが、現時点では「世界最大の"国を持たない"民族」として複数の国にバラバラに分かれて住んでいるという状況です。

当然のことながら、クルド人では各国で「分離独立」を目指す動きがあります。トルコとしては、国土を減らすわけにはいきません。クルド人のトルコからの分離独立への動きに対し非常に警戒していいます。

シリア内戦でアメリカの支援を受けてクルド人部隊の能力は上がっています。トルコとしては、独立しかねない少数民族のクルド人が強くなるのを望みません。軍事支援は終わったとはいえ、いまだに陰に陽にクルド人を支援するアメリカのことを快く思っていません。

トルコはついにロシアに寝返りつつある

トルコとアメリカは同じNATOの同盟国です。アメリカからは最新鋭の戦闘機などを提供されています。しかし、アメリカはクルド人を支援するということで、トルコとしては極めて憂慮する事態となっています。

「アメリカはむしろ我々の敵ではないか!?」と考えてもおかしくありません。

事実、トルコはロシアからロシア製のS400ミサイルを購入します。NATO加盟国なのに、よりによって(NATOの仮想敵国の)ロシアから最新鋭ミサイルを購入するということで、前代未聞です。

さらに、先ほど紹介したThe National Interestというウェブページの記事でトルコに対するアメリカの懸念が記載されています。

アメリカはNATO同盟国としてトルコに提供するステルス戦闘機を提供することになっています。もしトルコがロシアの最新鋭ミサイルを、アメリカのステルス戦闘機に「使ってみて」、戦闘機の性能をテストすることは十分考えられます。戦闘機の回避性能に関するデータが得られるわけですが、このデータがロシアに渡ってしまったらアメリカは困ることになります。

トルコがクルド人問題でアメリカを警戒しているように、アメリカもトルコに対して警戒しています。エルドアン大統領の個人的理由ではなく、構造上アメリカとトルコの外交関係は悪化しています。

アメリカが頼りにならないので、ロシアに寝返りつつある、というのがトルコの状況です。さらにロシア・イラン・トルコの3か国でシリア問題に関し協議しています。アメリカが敵視するイランとも関係を強化しようとしています。外交的にはトルコはアメリカの敵性国になりつつあります。

トルコリラは大丈夫か?

アメリカの敵性国になりつつあるトルコは、今後アメリカから経済制裁など様々な妨害を受ける可能性があります。世界の覇権国アメリカを敵に回すと、経済発展は見込めません。。ただ、トルコとしても、自国から独立しかねない少数民族であるクルド人を支援するアメリカを簡単には許せません。経済が駄目になるからといって、簡単にアメリカに譲歩できません。

となるとアメリカとトルコの対立は泥沼化するので、今後もトルコ経済、ひいてはトルコリラも低空飛行が続くのかなあと思います。

結局トルコを自分たちの陣営に引き込みつつある、ロシアが一番得しているかもしれません。ロシアとしては、黒海をはさんだ隣国のトルコを取り込むことで、安全保障上プラスの効果があります。アメリカからするとロシア・トルコそしてイランと、「新・悪の枢軸」が形成されつつあるといったところでしょうか。

 







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スモーク

スモーク

新卒日本企業→豪州駐在→豪州企業転職→日本に帰り日本企業転職→外資系企業転職で今に至る。オーストラリアには7年在住。豪州株がポートフォリオの主力で総資産は1億円弱、年間受取配当金は税後で300万円。すでに経済的自由は達成も、まだまだ資産と配当金を伸ばしていきたいと考えている。

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